Center for the Promotion of Global Education

グローバル教育推進センター交換留学マンスリーレポート

デュースブルグエッセン大学
2012年10月号 社会学部 K.K

◯授業紹介②

今期は語学の授業だけではなく、Gesellschaftswissenschaften(社会科学部)で開講されているSoziologie(社会学)の授業をいくつか取っているので紹介したいと思います。

Grundlagen der Soziologie
基礎社会学の授業で、主に大学一年生を対象とした講義です。この講義では社会学の基礎や、社会学で取り扱う基本的な問題を取りあげていきます。一人の先生がすべての授業を受け持つのではなく、2、3回毎に先生が変わり、それぞれの専門分野について講義して行きます。内容的にはそこまで難しくないですが、専門用語が多く出てくるので社会学の基礎的な知識がないとついていくのは難しいです。しかしながら、基礎的な社会学の復習と社会学の専門用語を習得するには非常に良い授業なので留学生にとっては非常に役立つ授業だと思います。他にもGrundlagen….やEinführung… といったいわゆる日本の「一般教養」にあたる授業がたくさん開講されています。

Comparative Sociology (Vergleichen Gesellschaft)
この授業も同じ社会学の授業です。この授業のおもしろいところは、英語とドイツ語で同じ内容の講義が週2回行われるということです。講義の内容は少しレベルが先ほど紹介した授業よりは高いです。事前にデュルケムやウェーバーといった社会学者の著書を予習し、その内容を講義で先生が説明し、それについて議論をするという形式の講義です。留学生の私にとって議論する事は容易ではないですが、外国語で自分の今まで日本で学んだ知識や自分の考えを伝えるということはおもしろみがあり、語学の授業だけをとっていた先学期とは比べ物にならないくらい、充実した勉強をすることができていると感じています。

Comparing Society : Perspective on the Individual

英語で開講されている社会学のゼミです。この授業も事前に文献を読んで、その内容について議論するという形式です。例えばロマン主義時代と個人、グローバリゼーションと個人といった内容の論文、または文学作品を読み、個人がどのようにとらえられているのかということを議論していきます。私は社会思想を勉強しており、自分の卒業論文にも繋がる授業内容なので、毎回大変ではありますが英語の文献を読み出来るだけ議論に参加できるように心がけています。不思議な事に、英語はほとんどこちらへ来てから勉強していないのにも関わらず、ドイツ語の論理的すぎる文法になれたせいか、かなり英語が以前より簡単に読み、話せるようになりました。ドイツにいるのならドイツ語で勉強しないと意味がないと思う人もいるとは思いますが、英語も私にとっては外国語であり、なによりもドイツで何かを学び取るためには言語にこだわる必要もないと感じ、このゼミをとる事を決めました。

授業風景

◯治安、危険を感じた事、トラブル等について

7ヶ月間、ヨーロッパで生活してきてもっとも危険だと感じた事はドイツではないのですが、フランスで乱闘に巻き込まれた事です。パリのシャルルドゴール空港から友達を見送り、帰る途中の地下鉄の中でその事件は起こりました。その時乗っていた電車はちょうど日本の新快速の車両のような2人がけの椅子が向かい合わせになっている形で、私は入り口近くの椅子に座っていました。パリの北駅に到着する5、6駅前の駅で大男が大きな声で電話をしながら乗車してきました。その電話が終わった時、私の通路を挟んで反対側に座っているおじいさんが入り口付近に立っているその男に何かを話しかけていました。その会話は徐々に声高になり、しまいには男がおじいさんの顔面を殴り、おじいさんはその場で倒れ、隣にいた奥さんは泣き叫び、電車内が騒然となるかと思うと、すぐさま近くに座っていた青年達がその男を取り押さえにかかりました。しかしその大男もまけてはおらず、殴りあいが始まりました。近くに座っていた私もその殴りあいに当然巻き込まれ、一時はどうなるかと思いましたが、まもなく電車は幸い北駅に到着しすぐにその場を離れました。ホームにいた人たちも、電車が来たと思うとその車両で殴り合いが行われているのを見て騒然としていました。パリの昼間にこのようなことが起こるのは稀だとは思いますが、それでもやはり日本では絶対にあり得ない光景でした。なによりも大男に立ち向かうフランス人の精神に驚きました(男女問わず立ち向かっていました)。少し過剰解釈だとは思いますが、やはり革命の起こった国ならではなのかなと思います。
デュースブルク、エッセンの治安についてははっきりいうとあまり良くはないですが、そこら中で犯罪が多発しているわけではないので留学する分には問題はないと感じています。

◯留学とインターネット

今日インターネットの普及は目覚ましく、そのおかげで数十年前の留学環境と比べると格段に日本との連絡も取りやすく便利になっていると言えます。しかしながら、その一方でインターネットが留学の質を下げているようにも思えます。インターネット上にいるときは、もはやそこはいくら窓の外がヨーロッパであろうとヨーロッパではなくなります。例えばFacebookなどといったSNSサイトなどを使用している時、日本にいるときとその環境は大差がなくなります。そこでの共通言語は母国語になり、文化も然り、振る舞いといった諸処の行為が日本と変わらなくなります。その弊害として、ホームシックや普段外国語を思うように話す事ができないストレスから部屋に引きこもりがちになったりすることも考えられます。もちろん、Skypeで家族と話す事もSNSを通して日本の友達とコミュニケーションをとる事は留学中、心の支えになったり、ストレスの解消にはなりますが、あまりに度を越すとここがどこなのかわからなくなるような錯覚に襲われます。私自身来て数ヶ月の頃はそのような症状が多少ありました。しかしながら、来てしまったものは仕方なく、ここで頑張るしかありません。そうそうに腹をくくるということが大事だと感じました。その国に順応しようとすることで、日々の楽しみや充実感が生まれ、留学をしに来た意味を思い出すことができます。一年間という限られた時間の中で一日足りとも無駄にしてはいけないという信念を持つ事が、語学の善し悪しよりも海外で生活する事は非常に重要なことだということができます。やれるだけのことはやる、あとはチャンスが巡ってくるのを待つだけということを先輩にいわれた事があります。確かにその通りで、何事もはじめから、まして外国で上手く行くはずがないのです。チャンスはいつか巡ってくると信じ、万全を期すのみです。私自身も出来る限り、インターネットからは離れ、現実のドイツを生きるように心がけています。

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