Center for the Promotion of Global Education

グローバル教育推進センター交換留学マンスリーレポート

デュースブルグエッセン大学
2011年6月号 文学部 S.S

日本から持ってきたら良かったと思うもの

 外国に出発する際、もちろんのことながら限られた荷物しか持っていくことはできません。ましてや1年間の留学です。なにを持っていくべきなのかと考え、あれもこれもと列挙していけば、枚挙に暇がなくなってしまいます。僕は出発直前(4,5日前ぐらい)までは荷物の準備を一切していませんでした。しかし、いざ準備を始めてみるといろいろなものを持って行きたくなり悩んでしまいました。

 すでに4カ月ほどドイツで生活しましたが、僕自身「持ってきたら良かった!!」といったものは基本的にありません。服・お金・カード・辞書・本があれば十分です。ドイツでも人は生活していますし、基本的に何でも手に入ります。日本から必要以上のものを持ってきて家に引きこもっていても友人はできませんし、ドイツ語を話す練習にはなりません。不足することは街に出るきっかけにもなりますし、最悪の場合Essenからは以前紹介した学生証を使えばタダでDüsseldorfという日本街にも行くことができます。僕は余計なものを持ってくることをお勧めしません。しかし今回の課題は「日本から持ってきたら良かったと思うもの」なので強いて言うなれば僕の個人的なものになりますが以下のものをあげます。

○日本のお土産

 僕の場合は語学学校に行っていたので、一か月ほどでせっかく仲良くなれた友人と別れなくてはいけませんでした。せっかく友人になれたので僕の実家(山形)の名産品の将棋の駒のストラップをあげたところ、非常に喜んでもらうことができました。また母に後ほど送ってもらった手ぬぐいなども外国人には珍しいようで予想以上に喜んでもらうことができました。いつかはせっかくできた友人とも別れはやってきます。その際に日本らしいちょっとした「なにか」を渡せる準備をしておくといいかもしれません。

○歯ブラシ

 ドイツの大人用の歯ブラシは「口に入るの?」と思うぐらい大きなサイズです。友人は口が切れたと言っていました。ドイツでは子ども用のサイズが日本の成人用の歯ブラシのサイズです。子ども用のサイズを使えばいいのかもしれませんが、口の中に入れるものなので気になる人は持ってきてもいいかもしれません。

○みみかき

ドイツにはめんぼうはありますが、みみかきはありません。ドイツ人の中には「必要以上の耳掃除は耳に悪い」と考える人もいるようで、日本人のように頻繁に耳掃除をしません。耳掃除にはみみかき派のひとは持ってくるのをお勧めします。

今3つほど挙げましたが、正直考えるのには時間がかかりました。僕の言いたいことは繰り返しますが「ドイツでも人は生活している」ということです。必要以上に持ってくることは決してプラスには働きませんし、僕は言語を勉強するということは文化を勉強することでもあると考えますので、現地人と同じ物を使って生活してみるのもいいのではないでしょうか。

 

現地の学生、友人について

 

友人たちとのBBQ

○留学生について

ユーロ圏の大学にはエラスムス制度というものがあります。この制度はユーロ圏の大学で取得した単位は自分の国の大学の単位としても有効になるという制度です。京都の大学間にある単位互換制度に似ていると言えます。この制度で留学のハードルはそれほど高くなくなり、様々な国の学生がユーロ圏内で留学しています。Duisburg-Essen大学も例外ではなく様々な国の留学生がいます。ドイツ人学生と留学生どちらのほうが多いのかわからないほど留学生がいます。授業が一緒であったり、大学主催のPartyなどで様々な国からの留学生とも知り合えますし、大学にはスポーツプログラムがあります。僕も週に一回フットサルをしていて、そこでもドイツ人や留学生とも友達になることができます。 

○友人について

 Duisburg-Essen大学には東アジア研究という学科がありたくさんの学生が日本語を勉強しています。以前紹介したTandempartnerというお互いの言語を勉強しあうパートナーを探している学生もたくさんいます。比較簡単にドイツ人の学生の友人を見つける事が出来ます。そして、その友人の友人…といった具合で友人の輪を拡げていけばたくさんの友人をつくることができます。最初のうちはPartyなどにも積極的に参加し、自分から友人をつくる努力が必要です。待っていても友人はできません。

 僕は日ごろTandempartnerのドイツ人の学生たちと一緒に遊んだりします。一緒にご飯を食べたり、お酒を飲みに行ったり、休日には観光に一緒に行ったり、BBQなどをしたりして過ごしています。やはり留学の充実は勉強もさることながら、友人と過ごす時間というものも大事になってくると思います。机の上では学べないドイツの文化やドイツ人の理解にもつながりますし、何といってもドイツ語をたくさん話し、聞くことがドイツ語上達の近道ではないでしょうか。いい意味で友人を使うことは重要だと思います。 

 

ドイツ脱原発への取り組み

ドイツの田舎に建てられているたくさんの風力発電装置

今回は先日Berlinにバスで向かっている際に田舎道を通っていると非常に多くの風力発電機が目に付いたのでこの題にしました。

 3月11日に起こってしまった東日本大震災による地震・津波のみならず、今現在も続く東京電力福島第一原子力発電所の事故は世界各国に非常に大きな影響を与えています。ここドイツもその例外ではなく、募金活動やチャリティー活動が頻繁に行われています。本当にこのことには日本人として深く感謝しています。僕も少ない額ですが募金やサッカーのチャリティーマッチを観戦したりしました。

 しかし、何といっても日本でも話題になっているようにドイツと言えば「脱原発」の話題が今騒がれています。ドイツでは震災直後から原発反対デモが頻繁に行われ、メディアでは毎日のように話題にのぼっています。以前からドイツは原発には好感がもたれてはいませんでしたし、将来的には脱原発を掲げていました。しかし、日本でも報道のように今回の福島での事故の影響もあり、ドイツのメルケル政権は国内にある17基の原子力発電を2022年までに完全に廃止するというように政策を前倒しで転換させました。今現在はドイツでは8基の原子力発電しか作動していません。これは他国の先駆けになるよい政策だという声もある中、総発電量の28%をなくすことにより、風力・水力・太陽光などの代替エネルギーの建設等にかかるコストの捻出をどうするのか、電気代が上昇するのではないかという懸念もあるのが事実です。また、ドイツの場合原子力発電設備が世界で二番目に多いフランスが隣にありますし、ヨーロッパにおいては一つの国だけの問題ではなく、隣り合う国々、ヨーロッパ全体で議論になり、行動が起こされてはじめて意味をなすのではないかと考えます。

 このドイツのような「脱原発」の行動が将来的に考えた時に本当に良い結果を招くのか、そうでないのかはまだ分かりません。しかし、先進国の一つでもあるドイツが世界の国々に先駆け「脱原発」を明確に掲げ行動していることは非常に意味のある事ではないでしょうか。日本の原子力発電への依存率やその他の条件を考察してみなければ一概に「日本も脱原発をやればいいじゃないか」とは言えません。今は一日でも早く被災地が復興し、福島の事故を片付けるのが先決であると思いますし、そう願っています。

 しかし、先日のスペインのカタルーニャ国際賞受賞式の際に作家の村上春樹氏は自身の「非現実的な夢想家」というスピーチの中で「しかし急速な経済発展の途上で、『効率』という安易な基準に流され、その大事な道筋を我々は見失ってしまったのです」と戦後日本におけるエネルギー開発について批判しています。このスピーチは日本のことでしたが、日本のみならず、今回の東日本大震災を契機として今一度今まで世界各国の進んで来た「道筋」を振り返り、今後進むべき「道筋」をじっくり再考すべき時がやってきたのではないでしょうか。