Center for the Promotion of Global Education

グローバル教育推進センター交換留学マンスリーレポート

バルセロナ自治大学
2012年4月号 国際文化部 Y.U

・この1年を振りかえって(留学前と今を比較して変わったところ等)

留学生活を通じて、『自分が日本人であること』と『日本がいかに素晴らしい国であるか』ということを痛烈に思い知ることになりました。

私は留学をするまで日本があまり好きではありませんでした。例えば他国に比べて時間に細かいことや思いをあまり口に出さないことなど、好きになれない文化・習慣がいくつかあったためです。そのため日本と違った文化や習慣をもつ海外の国に憧れのようなものを抱いていました。

しかしその憧れは到着して3ヶ月ほどで崩れることとなりました。スペインで生活していくうちに、自分の価値観では受け入れられないものがたくさん出てきてしまったためです。

その1つは彼らのいい加減さです。例えば時間にいい加減なところがあります。授業やその他活動など、多くの物事が15分程度遅れで始まります。もし週3回の授業が毎回15分遅れで3ヶ月行われたとすると、遅れた時間は合計540分、つまり9時間分も無駄な時間を消費してしまうことになります。これはもったいないと言わざるを得ません。また、約束に関してもいい加減です。「明日集まろうね」と言ったのに突然のキャンセルでほとんどの人が集まらなかったり、約束が急に変更になったりすることがあり、がっかりすることは少なくありませんでした。

そしてもう1つは気配りや気遣いがあまりないということです。スペインでは他人のことよりもまず自分のことを優先して考える人が多いような気がします。(※彼らに悪気は全くありません)例えば夜12時過ぎからギターを大音量で弾き始める人もいますし、夜遅くまで外で騒ぐ人もいます。また、彼らのような人は「静かにしてほしい」と言わない限り気付くことはありません。

以上のようなカルチャーショックを受けてしまったのは、日本の文化や習慣と比べて信じられないことであったからであり、自分は日本の文化や習慣の方を当然だと思っていたからです。また、そのカルチャーショックを通じて「自分は日本の文化・習慣の中で育った日本人の一人であり、その価値観を重視する人間」ということに初めて気付きました。つまり日本は自分の価値観にあった国であり、自分にとって最も過ごしやすい国であるということを理解した体験であった思います。それ以降、私は日本という国に誇りと感謝の気持ちを持っています。

 

・帰国後どう留学経験を生かす予定なのか

上記で述べたように、自分の育った地域に対する感謝の気持ちが強くあります。そのため地元に貢献できることをしたいと考えています。例えば地元で就職先を探すことはもちろん、教育に関係する職を探して地元の子供たちの教育に貢献することや、スポーツ活動を通じて地域のコミュニティー発展に貢献すること、あるいは地元の多くの行事に積極的に関わっていくなど、あらゆる方法を考えており、帰国後に最も地元に貢献できる方法を見つけてそれを実行するつもりです。

次に、スペインで生活していて良いなと感じたことは日本に持ち帰りたいと思います。例えばドアを後ろの人のために開けて待っておくところです。スペインでは先にドアを開けた人が、私が入るためにドアを開けて待っていてくれることがよくあります。これはする方もしてもらう方も気持ちがいいので日本でもできる限り行いたいと思います。

また車は、歩行者が横断歩道で渡ろうと待っていると多くの車が止まってくれます。歩行者としては助かることが多く、日本でもそうするべきだと感じました。日本では運転する機会が多いので、積極的に真似したいと考えています。

以上のように現在私が帰国後にしたいと考えていることは、「地元に貢献する方法を探すこと」と「スペインで良いと感じた行動を日本でも行うこと」の2つです。

 

・異文化から見える『自分』

私の場合、留学生活の約9ヶ月はかなり苦痛の日々でしたが、それは私の細かい性格とスペインの人たちの大雑把な性格と合わなかっただけです。逆に細かいことを気にしない友人にとってはとても居心地が良いようです。事実、帰国日を延長して7月の後半まで滞在する予定の友人が何人かいます。

このように留学先の国の民族性と自分の性格が合うかは、行ってみなければわかりません。留学前にインターネットなどで検索すればある程度調べることはできますが、調べた結果もし自分の性格と合わなさそうだったとしても「なんとかなるだろう」と思ってしまいがちです。またそのような情報は必ず正しいとはいえないため、信じにくいということもあります。

だからといって留学に行かない方がいいと言いたいわけではありません。むしろその逆で、留学先の国と相性が良い・悪いに関係なく行ってみることには十分意味があると言いたいのです。なぜなら異なる文化に触れることによって、『自分』というものがよく見えてくるからです。特にヨーロッパのように日本とは全く違った文化をもつ国に行けば、その文化に出会ったときに自分はどちら文化を好むかがよくわかるはずです。例えばスペインで生活していて「時間にルーズな面は私にとって嬉しい」、「何事もはっきり言われるのは少し嫌だ」と感じた人がいたとすれば、その人は時間にはこだわらない性格で、感受性の高い人ということがわかります。この2つの例だけではかなりざっくりとした感じですが、その数が多くなればなるほど自分というものがより鮮明に理解できるようになります。事実、私は多くの異文化体験を通じて自分というものがよくわかるようになりました。今まで気付かなかったことにもたくさん気付くことができました。

私はスペインに留学して本当によかったと感じています。留学前の自分と今の自分では考えが全く異なっているからです。留学しなければ自分のことに気付かないままだったのかと思うと、少し怖いと思ってしまうほどです。それほど貴重な体験でした。よって他の方も、留学する機会があればしてみることをおすすめします。あなたが知っているつもりの『自分』は、思っているよりも知らないかもしれません。